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アルシオン通信

Alcyon Blog

2023年05月21日 の投稿
2023年05月21日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年34本目】映画「ザ・ホエール」観ました。

【解説・あらすじ】
同性の恋人アランに先立たれてから過食状態になり、極度の肥満体となった40代の男チャーリー(ブレンダン・フレイザー)。
看護師である妹のリズに支えられながら、オンライン授業でエッセーを指導する講師として生計を立てていた。
そんな中、心不全となり死期が近いことを悟った彼は、8年前にアランと暮らすために家庭を捨てて以来、疎遠になっていた娘エリーに会おうと決意する。
彼女との関係を修復しようとするチャーリーだったが、エリーは学校生活や家庭にさまざまな問題を抱えていた。

ダーレン・アロノフスキー監督が、劇作家サミュエル・D・ハンターによる舞台劇を映画化。
同性の恋人と暮らすために家族を捨てた男が自らの死期を悟り、疎遠になっていた娘との絆を取り戻そうと試みる。
体重270キロを超える主人公をブレンダン・フレイザーが演じ、
セイディー・シンク、ホン・チャウのほか、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートンらが共演。

【感想】
愛すること、信じることの残酷さを有り有りと炙り出す!!

まずストーリー。

演劇が原作の密室会話劇。
メイヴィルの小説「白鯨」をメタに一つ一つのセリフを際立たせ、
ゆっくりじっくり、確実に進行していくストーリーテリングは実に重厚。
テーマの際立たせ方、迫り方もソリッドでヒリヒリ感も十二分。
キリスト教的な素養やアメリカ社会の歪みへのリテラシーは多少要求される感はありますが、
それでも局地的、他人事ではないストーリーに仕上がっています。

そして演出、演技。

少ない登場人物(わずか5人)だけできっちり牽引。
一人一人の感情の機微と飽和を、会話だけでなく、佇まいや目線、静的な立ち位置などで表現し、
過剰な説明をそぎ落とす、引き算の演出は奥行きの深さを作っています。

そして何より俳優陣の熱演。
特に、やはり、ブレンダンフレイザーの細やかな演技には目をみはるものがあります。
特殊メイクにまるで見えない巨体、ちゃんと病的、死期が迫る表現も秀逸。
鬼気迫る、とはまさしくこういう演技のことを言うのだと感じました。

さて。

本作の大きなテーマである贖罪、救済。
作品では「正直である事」「ありのまま」にその解答を委ねています。

振り返って実情。

個人であっても社会であってもなかなかに偽りなく生きることは難しい。
結果の残酷さをどこまでも受容することも求められる。
それは達観なのか諦めなのか、それとも慈悲なのか。
「あなたは払う犠牲の痛みに耐えうるのですか」と深く問われている様に感じました。

個人的には娘を持つ父としての有り様を強く揺さぶられる経験となりました。
傑作です。
強くお勧めしたいと思います。

【評価・付けるとしたら」
4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た

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