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アルシオン通信

Alcyon Blog

2023年07月02日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年42本目】映画「Aftersun/アフターサン」観ました。

【解説・あらすじ】

思春期真っただ中の11歳のソフィ(フランキー・コリオ)は、31歳の父親カラム(ポール・メスカル)と夏休みを過ごすため、トルコの閑散としたリゾート地にやってくる。
二人はビデオカメラで互いを撮影し合い、親密な時間が流れる。
20年後、当時の父の年齢になったソフィが映像を見返すと、そこには大人になって分かる父親の一面があった。

幼いころに父親と二人きりで過ごした夏休みを、成長した女性が回想するかたちで描き、世界各国の映画祭や映画賞で話題となったヒューマンドラマ。
トルコのリゾート地で31歳の父親と短い夏を過ごした11歳の少女が、当時の父親と同じ年齢になり、父親の記憶をたどる。
監督は本作が初長編となるシャーロット・ウェルズ。
出演はポール・メスカルをはじめ、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン=ホールなど。

【感想】
あの頃。
僕はまだ若く、だけど確かに父親だった。
愛することの苦しみを見事に映し出した、控えめに言っても大傑作映画。

まず、ストーリーや構成。
ほとんどヒントなく、ただただ父と娘のひと夏の出来事をフィルムタッチの映像で切り取っていくことに徹した構成。
ドラマチックな展開は殆どないので話のメリハリやプロットの回収、
鮮やかな起承転結を期待すると確かに拍子抜け、人によっては退屈かもしれません。
逆に言えば観客の想像力、個人体験とのリンクを期待し、信頼しきった脚本であるともいえます。

次に演出だったり演技だったり。
20年前、父の風景。
今の成長した娘の風景。
映像の質を変えて視点の違いを感じさせる手法。
僅かなセリフの隙間に感情を折り込む、静的な演出。
この2つが父と娘のリズムを紡ぎ出す様は実に巧み、かつ新鮮。
ありふれたストーリーに見えてしまう、ギリギリの際を見事に渡り切っています。

父カラムと娘ソフィーの演技、そのアンサンブルも本当に美しい。
一つ一つの表情に喜怒哀楽、その間の感情までも表現しきっています。

さて。
父親とはいえ31歳はまだ若く。
娘も11歳となればそれなりに早熟で。
二人の関係はどうしても何処かぎこちなく感じるのは、これもまたいつか何処かであった光景で。

悩み、苦しみ、情けなく。
恋しく、脆く、寂しくて。
複雑な、感情の塊が受け継がれてゆく、、。

やはり思い出したのは父の面影。
いつか「その歳」になったとき僕は何を思うのだろうか。
彼の若さをどう見つめるのだろうか。

心の深く、開くのが怖かった扉からかすかに光が差し込むような体験。
素敵な作品、生涯にわたり思い出す一本になったと思います。

【評価・付けるとしたら」

4.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2023年06月21日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年40本目】映画「TAR」観ました。

【解説・あらすじ】

リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、ドイツの著名なオーケストラで初の女性首席指揮者に任命される。
リディアは人並みはずれた才能とプロデュース力で実績を積み上げ、自身の存在をブランド化してきた。
しかし、極度の重圧や過剰な自尊心、そして仕掛けられた陰謀によって、彼女が心に抱える闇は深くなっていく。

トッド・フィールドが監督を務め、ケイト・ブランシェットが女性指揮者を演じるドラマ。
有名オーケストラで女性として初の首席指揮者となった主人公が、重圧や陰謀といったさまざまな要因により追い詰められていく。
マーク・ストロングやジュリアン・グローヴァーなどが共演する。

【感想】
権力とエゴイズムを強すぎる音圧で奏できる、サスペンス?いや、これは多分ホラー。

まずストーリー。
まず目につくのは作品が取り扱う「問題」の多さ。

キャンセルカルチャー。
権力を作り出してしまうシステムとエゴイズム。
ジェンダーギャップと人種問題。
コロナ社会。
SNSの悪意。
芸術の狂気性。

ざっとみてもこれだけ多くの要素をストーリーに組み込んでいます。
普遍的なもの、現代的なものが混在するので、ぐちゃっとどっちつかずになりそうなところ、
どれもこれもギリギリのバランスできっちり可視化されるところはさすがの出来栄え。
誰もが反応できるポイントをきっちり作り上げてます。

そして演出だったり演技だったり。
かなり意図的に解釈、とくに物事の善悪、人の弱さを観客に委ねる、観る側の負荷を高く求める演出。
かなり振り切ってるなと感じました。
ケイト・ブランシェットの演技も圧巻。
全編彼女の視線で物語が進むのですが、これだけの長尺、これだけ複雑な内容をじゃあ、だれがやれるの?
説得力の強さはもはや暴力的、ねじ伏せるような力技。
物語との親和性、キャスティングについてはこれが唯一の正解と納得せざる得なかったです。

ちょっとこれはいかがなものかと思った点は、

・オープニングの演出。冗長だし、奇をてらったのだとしても効果的にはどうしても思えない。
・肝心の音楽シーンが少なく、薄く、あっても迫力不足。音楽そのものがはらむ狂気が伝わってこない。

のは極めて残念でした。

さて。
いかなるレイヤーにもそれを支える仕組みや構造が有り、かならず権力が生まれる。
権力はいつだって蠱惑的。
相当自律的に振る舞ってもいつのまにか悪魔のように心の弱い部分に巣を作り、良心を腐敗させる。
いつも僕らが観てきた、体験してきた、身に覚えがありすぎるあの不快感。
なにかに邁進すること、例えば音楽に身を捧げること自体は本当に尊いことなのに、
深淵に近づくほど。高みに迫るほどに張り巡らされている罠に気づけなくなる。

鑑賞後、体感として残ったのは「恐怖」。
この畏怖すべきものをいかに飼いならすのか。
自分が、世界が、怖くて恐ろしい。
痛烈なホラーを体験したように思います。

【評価・付けるとしたら」
3.8です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年06月11日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年39本目】映画「最後まで行く」観ました。

【解説・あらすじ】

12月29日。刑事・工藤(岡田准一)は、危篤の母のもとへ急ごうと雨の中で車を飛ばしていた。
そのとき、スマートフォンに署長から着信が入り、署内での裏金作りへの関与を問われた直後、
妻からの電話で母の死を知らされた彼は動揺し、車の前に現れた男をひいてしまう。
工藤は男の死体を車のトランクに入れて葬儀場に向かい、母とともに焼こうとする。
そこへ「お前は人を殺した。知っているぞ」とのメッセージが届く。
送信主は県警本部の監察官・矢崎(綾野剛)で、工藤がひいた男と深い関わりがあった。

日本では2015年に公開された韓国映画『最後まで行く』をリメイクしたクライムサスペンス。
裏金作りに関わる刑事が、ある事故を起こしたことをきっかけに次々と災難に見舞われる。
メガホンを取るのは藤井道人。
岡田准一、綾野剛が出演する。

【感想】
これぞ、日本ノワールの標準点!暗闇を切り裂く痛快アクション映画!

まずストーリー。
元の韓国版は未見でした。(後、鑑賞)
非常にテンポよく、淀みなく、スピーディーなんだけれど観客を置いてきぼりにしない。
伏線の回収も的確。
リメイクはストーリーだけじゃなくてその空気感だったり、
リズムだったりをうまく取り入れることだと思うのですが、
かなり高精度でできているのだろうと感じました。
ストーリーのベースも的確に日本化。
脚本の手練感も十分楽しめます。

そして演出だったり演技だったり。
岡田准一さんは強靭な肉体とダメダメな精神の対比を絶妙に演じていましたし、
綾野剛さんの狂気、柄本明さんの怪物ぶり等々、まさに演技合戦。
アクションの凄まじさ、
展開のダイナミックさだけじゃなく、
迫力のある表情、
精密な会話劇、
と隅々行き届いた演出、見応えありです。

ただ、

メインキャストの二人がタフすぎて、もはや不死身レヴェルなのはちょっと過剰。
アクションシーン一つ一つがやや長く冗長。
キャスティングで若干ですが、これ別な人のほうが良くない?と思うところも。

なのはやや残念。

さて。
まあアクション映画なので観てスッキリ!で良いのですが。
やはりしっかり社会の不条理だったり暗部を抉ってきてて。
いつだって誰だっていつの間にか陥る闇。
闇の手前で踏みとどまれるか否か。
危ういかもしれないな、と感じる瞬間が有りました。
示唆的な映画でもああったと思います。

【評価・付けるとしたら」
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
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by alcyon | 映画観た
2023年06月01日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年37本目】映画「ケイコ目を澄まして」観ました。

【解説・あらすじ】

生まれつきの聴覚障害により両耳とも聞こえないケイコ(岸井ゆきの)は、下町の小さなボクシングジムで日々練習に励んでいた。
彼女はプロボクサーとしてリングに立ち続けながらも、心中は不安や迷いだらけで、言葉にできない葛藤を募らせていた。
「一度、お休みしたいです」とジムの会長(三浦友和)宛てにつづった手紙を渡せずにいたある日、彼女はジムが閉鎖されることを知る。

聴覚障害のある元プロボクサー・小笠原恵子さんの自伝を原案にした人間ドラマ。
生まれつき耳が聞こえないプロボクサーと、視力を失いつつあるトレーナーの絆を描き、第72回ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門に選出された。
監督・脚本は三宅唱。
主人公を岸井ゆきの、彼女を指導するトレーナーを三浦友和が演じるほか、
三浦誠己、松浦慎一郎、渡辺真起子、仙道敦子らが共演する。

【感想】
静謐な街並みに響く、ささやかなリズム。「生活」を再定義する熱い物語。

まずストーリーだったり脚本だったり。
説明的なセリフを最小限に。
話の構成も時系列通り、複雑さを排除。
その結果必要な要素がきっちり際立ち、キャラクターの設定が粒立つ、的確な設計。
会話の豊かさ、確かさをきっちり担保していて好感が持てました。

そして演出や演技。
これはもう、なんといっても岸井ゆきのさんの正しい使い方、処方箋。
ここまでやれるんだ、こんなこともできるんだ。
その幅の広さ、凄み、深みを読み切って、信じて、託し切った監督、スタッフ陣の度量には感服しかないです。
また、三浦友和さんをはじめとした脇を固める俳優陣の抑えの効いた演技プランも見事すぎる。
絶妙な街の佇まいやこだわり十分な劇伴も実に効果的。
ウェルメイドな作品に仕上がっています。

ちょっとなーと感じる点があるとすれば、
肝心のボクシングシーンが今ひとつリアリティを感じないところ。
この辺はバランス調整、もっとしてもよかったと感じます。

さてさて。
ボクシング映画は大きなジャンルの一つ、
どれもこれも独特の熱気、独特の、特別な風景が特徴だと思っていたのですが。
この作品から感じるのは、一線を画した、ボクシング以外の風景、つまりは日常が満ちあふれてることでした。

生活することは、何もかもが実は特別で、
特別なことの集合こそが日常で、
だからこそ積み重ねられてきた日々は尊く、愛おしい。

誰にでも、もちろん僕にも特別な何か、
彼女のボクシングの様なものが必ずある、きっとある。

いつだって、今だって探し続ける、きっとそれが生きること。

そんなふうに実感させてくれる作品でした。

【評価・付けるとしたら」
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
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by alcyon | 映画観た
2023年05月26日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年36本目】映画「AIR」観ました。

【解説・あらすじ】

1984年。
経営難に陥ったナイキで、ソニー・ヴァッカロ(マット・デイモン)はCEOのフィル・ナイト(ベン・アフレック)にバスケットボール部門の立て直しを命じられる。
マイケル・ジョーダンというまだNBAデビュー前の新人選手に目を付けたソニーは、周りに反対されながらも彼に社運を賭けた依頼をする。

ベン・アフレックとマット・デイモンが共演し、ナイキのシューズ「エア ジョーダン」の誕生秘話を描いたドラマ。
1984年、経営難だったナイキのバスケットボール部門の担当者が、NBAデビュー前の新人選手マイケル・ジョーダンに一発逆転を賭けた取引を持ちかける。
監督をアフレックが務め、ジェイソン・ベイトマンやヴィオラ・デイヴィスなどが共演する。

【感想】
これぞ正統派!由緒正しきお仕事ムービー!!

まずストーリー。
「実話に基づく」、時系列通りに追った構成。
しっかりとした骨格、筋肉質な、といったワードが似合うしなやかで無理のない進行。
わかりやすさを追求した無理のないセリフ回し。
「何を伝えたいか」をシンプルに突き詰めたケレン味のなさ、さすが。流石すぎます!

そして演出だったり演技だったり。
ベン・アフレックとマット・デーモンの共演というだけでも必見なのに。
それぞれがしっかりと役にアプローチ。
互いを引き立て合う、見どころを相殺しない事にこだわった演技プラン。
控えめに言って眼福です!

さらにバスケットボールのマーケティングに革命を起こしたと言っても過言ではない、
アイコン「マイケル・ジョーダン」の使い方,魅せ方も超絶妙。。

時代の空気感も見事に写しきった映像も含めこれまたお見事!お見事すぎます!!

強いて言えばなんですが、

事実にこだわるあまり結構あっさり?に感じるところがあったり、
王道過ぎて意外さは少ない、

のはちょっとだけ気になりました。

さてさて。
小さな会社が大きくなっていく、のは誰もがときめくサクセスストリー。
期待するのはまさに奇跡の瞬間!のはずなんですが、、。

実際には

ほんのちょっとのひらめき、
誠心誠意の交渉、
職人のこだわり、
経営者の社員への信頼。

地道だったり、実直だったりといったことは地味で、ドラマ性は低いはずなのに。

ヒーロだけが世界を変えるわけじゃない。
僕が、あなたが、世界を変える。

この揺るぎのない事実にやっぱり心が震えました。

「僕だって」となにやら力漲る作品だったと思います。

【評価・付けるとしたら」
4.0です。

ちなみに
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by alcyon | 映画観た
2023年05月21日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年34本目】映画「ザ・ホエール」観ました。

【解説・あらすじ】
同性の恋人アランに先立たれてから過食状態になり、極度の肥満体となった40代の男チャーリー(ブレンダン・フレイザー)。
看護師である妹のリズに支えられながら、オンライン授業でエッセーを指導する講師として生計を立てていた。
そんな中、心不全となり死期が近いことを悟った彼は、8年前にアランと暮らすために家庭を捨てて以来、疎遠になっていた娘エリーに会おうと決意する。
彼女との関係を修復しようとするチャーリーだったが、エリーは学校生活や家庭にさまざまな問題を抱えていた。

ダーレン・アロノフスキー監督が、劇作家サミュエル・D・ハンターによる舞台劇を映画化。
同性の恋人と暮らすために家族を捨てた男が自らの死期を悟り、疎遠になっていた娘との絆を取り戻そうと試みる。
体重270キロを超える主人公をブレンダン・フレイザーが演じ、
セイディー・シンク、ホン・チャウのほか、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートンらが共演。

【感想】
愛すること、信じることの残酷さを有り有りと炙り出す!!

まずストーリー。

演劇が原作の密室会話劇。
メイヴィルの小説「白鯨」をメタに一つ一つのセリフを際立たせ、
ゆっくりじっくり、確実に進行していくストーリーテリングは実に重厚。
テーマの際立たせ方、迫り方もソリッドでヒリヒリ感も十二分。
キリスト教的な素養やアメリカ社会の歪みへのリテラシーは多少要求される感はありますが、
それでも局地的、他人事ではないストーリーに仕上がっています。

そして演出、演技。

少ない登場人物(わずか5人)だけできっちり牽引。
一人一人の感情の機微と飽和を、会話だけでなく、佇まいや目線、静的な立ち位置などで表現し、
過剰な説明をそぎ落とす、引き算の演出は奥行きの深さを作っています。

そして何より俳優陣の熱演。
特に、やはり、ブレンダンフレイザーの細やかな演技には目をみはるものがあります。
特殊メイクにまるで見えない巨体、ちゃんと病的、死期が迫る表現も秀逸。
鬼気迫る、とはまさしくこういう演技のことを言うのだと感じました。

さて。

本作の大きなテーマである贖罪、救済。
作品では「正直である事」「ありのまま」にその解答を委ねています。

振り返って実情。

個人であっても社会であってもなかなかに偽りなく生きることは難しい。
結果の残酷さをどこまでも受容することも求められる。
それは達観なのか諦めなのか、それとも慈悲なのか。
「あなたは払う犠牲の痛みに耐えうるのですか」と深く問われている様に感じました。

個人的には娘を持つ父としての有り様を強く揺さぶられる経験となりました。
傑作です。
強くお勧めしたいと思います。

【評価・付けるとしたら」
4.2です。

ちなみに
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2023年05月15日

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【観た/2023年33本目】映画「赦し」観ました。

【解説・あらすじ】
夏奈(松浦りょう)は、7年前に同級生の少女・恵未を殺害して懲役20年の刑を受けていたが、再審の機会が与えられる。
恵未の父・克(尚玄)と別れた元妻・澄子(MEGUMI)は、夏奈が釈放される可能性があるとの連絡を受けて、法廷で再審の行方を見守る。
当時の裁判では事件の詳細を語らず、検察の求刑通りに刑が確定した夏奈だったが、初めて恵未の殺害に至った動機を明らかにする。
それを聞いた克は復讐心に駆られる。

ある少女殺害事件の加害者と被害者の家族が抱える、葛藤や苦悩を描く法廷ドラマ。
同級生を殺害して懲役20年の刑を受けた女性が衝撃の事実を打ち明ける。
監督はアンシュル・チョウハン。尚玄、MEGUMI、松浦りょうのほか、生津徹、藤森慎吾、真矢ミキらが出演する。

【感想】
法律は誰を赦すのか。救いの意味を問いただす意欲作。

まずストーリー。
所謂「被害者家族」と「加害者」のコントラスト、それぞれの苦悩、葛藤をしっかり、執拗に描き切っている。
前回の裁判過程を描かないことに徹し、何があったのかを想像させ、裁判=司法が万能ではない点にも強いフォーカスを当ている。
以上2点はは脚本上うまく描けていると感じました。

次に演出、演技。

裁判所の持つ無機質感、検察と弁護士の人情味のない駆け引きもやけにリアル。
必要以上にも感じましたが、実際傍聴するともっと寒々しかったりもするので映画としての落とし所をよく考えた結果なのでしょう。

役者陣、大奮闘。
主演の松浦さんは正しく鬼気迫る熱演。
MEGUMIさんをはじめ個性豊かなキャスト陣も確実にベストを尽くした演技。
非常に好感を持ちました。

ちょっとこれは、、と感じた点は

そもそも事件の量刑が重く、いったいぜんたい最初の裁判がどうだったのかモヤる。
再審制度ってこういう感じの事件で発動する?また結審もあの形、プロセスとして大丈夫でしたっけ?

司法上の取材がちゃんと出来てるか不安を感じました。

また、

アルコール中毒になった父親の佇まいがこざっぱりしすぎている。
母親の衣装とかが全然憔悴していかない、やけにおしゃれ。
いる、そのシーン?え、何度も必要、そのシーン??

などなど、セリフ以外の心理描写がちぐはぐだったように思います。

さたさて。
とはいえ、裁判がいつも正しく「正義」を炙り出しているかといえば、
どうなんだろう、そうあってほしいけど、、、というのが日々感じている正直な感想だったりするわけで。
厳罰を望む気持ちもわかるし、酌量の余地もわかる。
結局はバランス(図らずも天秤だし)なんでしょうけれども、、。

少年法を取り巻く環境や社会の状況、刑法の位置づけ等々、リテラシーを強く要求されるし、その上で
この映画の結論、相当に咀嚼が必要。

正直上手く飲み込めず、、といったところです。
ちょっと色々調べごとをしてからもう一回観ようと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆3.8です。

ちなみに
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2023年05月11日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
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【観た/2023年32本目】映画「聖地には蜘蛛が巣を張る」観ました。

【解説・あらすじ】

イランの聖地マシュハドで売春婦連続殺人事件が発生する。
「街を浄化する」という信念のもと、犯行を重ねる殺人鬼“スパイダー・キラー”に人々は恐怖を抱く一方で、犯人を英雄視する市民も少なからずいた。
そんな中、事件を覆い隠そうとする圧力を受けながらも、女性ジャーナリストのラヒミ(ザール・アミール=エブラヒミ)は臆することなく事件を追い始める。
ある夜、彼女は家族と暮らす平凡な男の狂気を目の当たりにする。

2000年から2001年にかけてイラン社会を震撼させた連続殺人事件を題材にしたクライムサスペンス。
不条理な圧力と身の危険を感じながらも、事件の真相を追うジャーナリストの苦悩を描く。
監督・脚本はアリ・アッバシ。
主人公を演じたザール・アミール=エブラヒミが同映画祭女優賞を受賞したほか、
メフディ・バジェスタニらが出演する。

【感想】
これは果たしてイスラム国家の問題なのか。
正義の暴走の行方から目を逸らせない、我が身事として振り返るべき問題作!

まずストーリー。
実話ベースではあるものの、ドキュメンタリータッチに寄せず、しっかりとソリッドな構成。
過剰な説明、例えばイスラム社会の背景などを削ぎ落とし、
緊迫感を最初から最後まできっちり張り詰めたスキのないストーリー展開はスピード感もあり呼吸を忘れる危険あり!
強烈な脚本、狂気じみているといって構わないでしょう。

つぎに演出、演技。
これもまた、エッジの効いた、硬派な演出。
「観客の価値観を揺らす。」
この一点にギリギリまでフォーカスを絞りきって、ピンと張り詰めさせる。
一体何が問題なのかをさらけ出すかのような手法はこれまた狂気じみている。。。
独特の画角や明暗のはっきりしたライティングなども効果的。
物語がくっきり浮かぶ、鮮やかな手腕でした。
俳優陣もおそらくはギリギリまで突き詰めた演技。
国の情勢や文化背景を考えると演じることすら危険に思えるような配役。。
よくぞ受けたし、よくぞ演じきった、魂のこもったとはまさにこのことでしょう。

少しだけ難点を言えば、
実話ベースとはいえご都合主義に感じる展開があるところ。
もっと脚色しちゃっても観客はついていける。
事実にこだわりすぎたのかな、とは感じました。

さてさて。
正義の暴走はいつの時代にも、いずれの場所でも再生産される人間の業。
今作ではミソジニー(女性蔑視)を強烈に取り上げていますが、
これはイラン国内、イスラム社会の問題ではなく、完全に世界へのメッセージであったと感じます。

例えば日本でのジェンダーギャップ、毎年発表されれば一時話題にこそなりますが、
何が問題なのか、動やったら解決するのかまで継続的に僕らが追っているかといえば自信なく感じます。
映画の中でのマスコミの有り様、本来の社会の木鐸たる姿も残念ながら日々強く感じることはないのが現状ではないでしょうか。

社会の有り様は構成する人々の営み。
正義の暴走は僕らの暴走でもある。

我が身のこととして感じなければいけない感じさせてくれた作品だったと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン

by alcyon | 映画観た
2023年04月26日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年31本目】映画「マルモイ ことばあつめ」観ました。

【解説・あらすじ】

1940年代の日本統治下の京城。親日派の父がいる裕福な家で育ったリュ・ジョンファン(ユン・ゲサン)は、
失われゆく母国語を守るため、朝鮮語の辞書を作ろうと各地の方言など、さまざまな言語を収集していた。
一方、教育を受ける機会がなく盗みを働いて日々生活していたキム・パンス(ユ・ヘジン)は、
ジョンファンの鞄を盗んだことをきっかけに彼の辞書作りに関わるようになり、母国の言葉の大切さに気付いていく。

母国語の使用を禁じられた日本統治下の朝鮮半島を舞台に、朝鮮語の辞書を作るため全国の言葉や方言を集めた史実をモチーフにしたドラマ。
辞書作りを通じて読み書きに目覚める主人公をのユ・ヘジン、辞書作りに奔走する朝鮮語学会代表をユン・ゲサンが演じる。
ユ・ヘジン出演のオム・ユナがメガホンを取った。

【感想】
対話とはまず「受け止める」こと。そんな基本の基本を今日の世界に知らしめた傑作!

まずストーリー。

日本と当時の朝鮮半島の関係性を縦軸、インテリと文盲者の交流を横軸、
更にどの世界でも変わらない親子の絆で奥行きをつけた、骨格のしっかりした構造。
歴史映画としても、バディ映画としても、家族映画としても上質で丁寧なストーリー設計です。

そして演出、演技。

まず目を引くのは徹底された美術配置。
街並みごと当時の「日本化されたソウル」を作り出す力量はさすがの韓国映画クオリティ。
手抜きななさに圧倒されました。

次に演出。
日本人をもっと悪辣に描けるところがあったはずなのに。
「職務に忠実すぎる」といった特性に特化させ、結果としての暴力にフォーカスを当てる。
上手い、巧すぎる!
リュ会長とパンス、そしてその輪がが大きく広がっていく様はテンプレート的ではあるがこれもまた的確。
家族の有り様、その葛藤も表現はストレート。
3つの要素を敢えてシンプルな味付けにすることで複雑な当時の情勢をあぶり出すことに見事に成功しています。

されに演技。
言うことなし、まさに極上。。
キャスティングのハマり具合、織りなす化学反応、何より演出を超えてやると言わんがばかりの情熱。
全キャストから感じることができるのは韓国映画の良き伝統、その層の厚さ。
演技合戦としても十分に見応えがありました。

ただ、

最後の方、急に駆け足になり説明が足りてない。
ラストシーンはもっと振り切ってくれても良かった。たとえベタと言われようとも。

とは思いました。

さて。

こういう映画、必ずいますよね、「史実と違う」と言い出す方々。
でも思うのですよ。
こういう映画の存在そのものが事実である、と。

事実に着想を得たフィクション、と銘打ってありますのですべてが事実なわけないのはわかってますが、

全て嘘と言いきれるほど「我々」は素晴らしいのか。
言葉を奪うのは褒められた行為と胸を張って言えるのか。

当時を生きていなかった僕らは正確な史実など知りようもない。
資料だけで語るならすでに公文書を捏造する「現代の」僕らに語る資格などない。
そういうことから目を背けることだけには最高に得意。

言葉とは気持ちの現われ。
気持ちを踏みにじった行為はやはり消えないと感じます。

対話とはまず受け入れること。
こんな基本、そろそろやっていこうよ、、。

歴史映画のようでいて、実は現代を強く揺さぶる快作だったと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.1です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2023年04月24日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年30本目】映画「神々の山嶺」観ました。

【解説・あらすじ】

雑誌カメラマンの深町誠は、行方が分からなくなっていた孤高の登山家の羽生丈二を取材で訪れたネパールで見かける。
羽生の手には、伝説的なイギリス人登山家ジョージ・マロリーのものと思われるカメラが握られていた。
日本に帰国後、羽生について調べ始めた深町は、羽生の人間性に魅了されていく。

夢枕獏の山岳小説を谷口ジローが漫画化した作品を、フランス人監督パトリック・アンベールが映画化したアニメーション。
謎を残したまま亡くなった伝説の登山家と、その登山家の遺品となったカメラを手に入れた孤高の登山家の物語が、雑誌カメラマンの視点で描かれる。
日本語版吹き替えを、堀内賢雄や大塚明夫、逢坂良太、今井麻美などが担当する。

【感想】
「そこに山があるから」という、シンプルな言葉の持つ狂気!

まずストーリー。
実在の人物を丁寧に追ったとされる人物描写。
自然の過酷さ、残酷さを緩みなく、そのまま過酷に、残酷に。
登山とは、冒険とは此処まで困難なのか、此処まで危険なのか、そして此処まで蠱惑的なのかを描ききっています。
ストーリーの伏線回収もお見事。
申し分のないストーリー展開でした。

そして演出。
アニメーションによる極めてリアルな状況描写は素晴らしく当たり!
クライミングや氷上での緊迫感、空気が薄い中での意識混濁など、
アニメーションだからこそできる「限界超え」を絶妙のバランスで表現しています。
音の表現、例えば氷を削る音等、録音も超一流。
まさに目の前にアルプスの氷壁が、微かに見えるエベレストの頂があるかのよう。
緊張感も半端なく、とてもとても95分の映画だったとは思えない重厚感に仕上がっています。

さて。
「そこに山があるから。」(正確には「そこにエベレストがあるから」らしい)という、原始的すぎる欲求。
これは僕らの実生活の中にも形を変えながらきっと存在していて。
その「理由」なるものが純度を高めるとどこからか狂気に変わる、変わってしまう。
踏みとどまるのか、行ってしまうのか、多分行かなくとも生きてはいけるのだろうけれども。

自分の中にある価値観、欲求、内なる狂気を問いただされる作品であったように思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た

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