公式サイト予約割引 ベストレート保証

アルシオン通信

Alcyon Blog

伊豆 タグへの投稿
2024年11月06日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年78本目】映画「サウンドオブフリーダム」観ました。

国土安全保障省の捜査官ティム(ジム・カヴィーゼル)は、
国際的な性犯罪組織に拉致された少年少女の行方を追っていた。
上司から特別に捜査許可を得た彼は、児童人身売買がはびこる南米・コロンビアに単身乗り込み、
前科者や資金提供を申し出た資産家、地元警察と組んで大規模なおとり作戦を計画する。
やがてティムは、尊い命を救うために命懸けで作戦に臨むことになる。

国際的な児童人身売買の被害に遭った少年少女の救出に奔走したティム・バラード氏の経験に基づく実録サスペンス。
児童人身売買の闇に立ち向かう捜査官をジム・カヴィーゼルが演じ、ミラ・ソルヴィノ、ビル・キャンプらが共演。
アレハンドロ・モンテベルデがメガホンを取り、メル・ギブソンが製作総指揮に名を連ねる。

【感想】
現在進行形の原罪と向き合う力作。
制作陣の覚悟に刮目せよ!!

まず、ストーリー、脚本。
よい意味でとても巧妙。
ヒーローを準備し、悪役をクッキリさせ、サスペンスやアクションまで用意。
激重なテーマの入り口を大きく取り、プラットフォームとしての「映画」を縦横無尽に活用。
まずは作品として、エンターテインメントとしてとっつきやすい設計、見事な脚本です。

そして演出演技。
これもまた巧み。
俳優陣の感情の明暗をきっちりつけながらの演技は圧巻でしたし、
世界にはびこる格差を映像として見せきることにも成功。
今回の作品は「児童誘拐・人身売買」がテーマ。
真実に基づく、とはありましたがおそらく映画で描き、
観客である我々が耐えうる作品に仕上げるにはこれもまたよい意味での希釈、その塩梅が問われるところ。
そこで大きく尺を取ったスリリングなアクションシーンや、サスペンス的な会話のやりとりなどなど、
もっと薄暗く、もっと血なまぐさくしてもよい所を敢えて明るく撮りきる演出プランも当たりに感じました。

さて。
人身売買は当たり前ですが
買い手があって成立し、格差があって需給が満たされ、闇経済を潤す財源となり、ひいては実経済を直撃し、また格差を生み出し、、。
この悪循環のスイッチであることはおぼろげながら認識はしていたつもりなのですが、
その規模、その荒っぽさ、子供たちが置かれた環境のひどさは演出上マイルドにしてあるはずなのに想像を遙かに超えるものでした。

社会には無数の問題があり、
どれもこれも解決は難しく、
仮に一つだけ克服しても、世界は変わらない。

諦観してしまうことは無理のないことかもしれません。
それでも主演俳優がエンドロールで語る、アンクルトムが世界を変えたように、
この映画の存在が現代の奴隷制度を打ち破らないとは誰にも言えないように思います。

少なくとも「我々」は買い手側、無関係ではあり得ないことも心に突き刺さりました。
社会問題に個人としていかにコミットしていくか、という大きなテーマも問われていたように感じます。

けして楽しい作品ではありませんが是非一度観ていただきたい一本になりました。

【評価・つけるとすれば】
4.5です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年10月31日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年77本目】映画「ラストマイル 」観ました。

ブラックフライデー前夜の11月、ビッグイベントにより流通業界が繁忙期を迎えようとする中、
有名なショッピングサイトから配送された段ボールが爆発する事件が起きる。
さらに事件は全国へと拡大し、日本中が混乱に陥る。
巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、
チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と共に、未曽有の事態の収拾に追われる。

ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」などの演出を手掛けた塚原あゆ子監督と、脚本の野木亜紀子が再び組んだサスペンス。
大手ショッピングサイトのセンター長とチームマネージャーが、協力して連続爆破事件の解決にあたる。
満島ひかり、岡田将生らが出演している。

【感想】
復讐すべきは会社か、さらにはその先か。
強欲という罪を問いただす社会派サスペンス。

まず脚本・ストーリー。
ドラマシリーズを全く未視聴でしたが問題なし。
スピンオフ感はおまけ程度、映画そのものとして骨格がしっかりとした、硬質な脚本。
ストーリーそのものにスピード感があり、台詞もエッジが効いている。
展開も時系列もめまぐるしいのに全く混乱しない。
まずは観客を退屈させない、
必ず物語に引きずり込んでやるという野心をしっかり感じられる脚本でした。
すさまじい、、、です。

次に演出、演技。
主軸の岡田将生さん、満島ひかりさんを使い切る。
脇を実力派でしっかり固め、サイドストーリーも緻密に展開。
時々ドラマキャスト出演、少ない尺でも重要なシーンに仕上げる。
などなど、手練れとしかいいようのない演出プラン。
それぞれの役に与えられたニュアンスをきっちり演じきる俳優陣も含め、
すいません、ドラマのスピンオフなんでしょ、映画はファンサービスなんでしょと嘗めていた自分を叱責しました。

さて。
今回の強く感じたのは欲望とは何かということでした。
欲望はどこから罪になってしまうのか。
おそらくは誰かの負荷が犠牲に変わり、飽和して崩壊した、その手前あたりなのだろうとは思うのですが。

その境界線はあまりに曖昧で、スパッと引けるラインがない。

幼い子供がクリスマスにほしがる小さなぬいぐるみ。
事業が当たって夢だったフェラーリ。

この違いが僕にはわからない。

想像力を働かせすぎると何も欲しがれず、
何も考えないと罪深き闇の中。

難しいなと正直感じました。

映画そのものとしては興味深く思いつつも、
犯人の動機や行動基準には共感できない点がありました。

この境目をこれからも見つめていきたいと思いました。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年10月27日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年72本目】映画「ホールド・オーバーズ」観ました。

1970年冬、アメリカ・ボストン近郊にある全寮制のバートン校。
生徒や教師たちがクリスマス休暇を家族と過ごす中、
嫌われ者の堅物教師ポール・ハナム(ポール・ジアマッティ)は複雑な家庭環境のアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)をはじめとする家に帰れない生徒たちの子守役を任される。
一方、食堂の料理長メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)は一人息子をベトナム戦争で亡くし、かつて息子と過ごした学校で年を越そうとしていた。
それぞれに孤独を抱える3人は、2週間の休暇を過ごす中で反発し合いながらも徐々に心を通わせていく。

アレクサンダー・ペイン監督とポール・ジアマッティが組んだヒューマンドラマ。
1970年のアメリカ・ボストン近郊の寄宿学校を舞台に、ほとんどの生徒や教師たちがクリスマス休暇を家族と過ごす中、
それぞれの事情で学校に留まる3人の男女を描く。
嫌われ者の教師をポール、食堂の料理長をダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、複雑な家庭環境の生徒をドミニク・セッサが演じ、
ダヴァインがアカデミー賞助演女優賞を受賞した。

【感想】
クリスマス休暇に降り積もるのは孤独を癒やす友情だった。
誰しもが思い浮かぶ「あの頃」を見事に映し出した傑作。

まずストーリー、脚本。
「寄宿舎モノ」といえば「今を生きる」を想起してしまうし、類似的な面は拭えない、のですが。
主要テーマをベトナム戦争のという痛みを伴う時代背景を織り交ぜて描く手法は的確で明快。
基本的には会話劇なのだけれど語りすぎず、それでいて説明不足もない。
王道ストーリーなのにちゃんと新鮮味のあるウェルメイドな脚本でした。

そして演出、演技。

寄宿舎の風景や校内の様子の撮影が実に雄弁。
台詞無くとも時代背景がしっかり伝わり、演技や台詞回しのフックなっています。
俳優陣の演技もまた見事。
親子関係が上手くいかない、トラウマと供に年齢を重ねる事への焦り、子供を戦争で失った孤独な者の喪失感。
それぞれの痛みをそれぞれの存在が、まなざしが、
しっかりと支え合うようになっていく様子はまるで優しいスープの様な味わい。
雪積もる冬の情景とも相まって心温まる演出でした。

さてさて。
親との相互理解の難しさ、
痛みを抱えたまま生きる苦さ、
大切な人を失ったまま過ぎていく日々を数えるつらさ。

生きていく上でいずれも避けがたく感じます。

それでも、それが何歳であっても
生き様を考える時間はあるし、
生き方を変える時間はある。

旅のように生きるとよく言いますが、
準備をするのに年齢は関係ない。
最初の一歩が踏み出せるかどうかだ。

小さな勇気を優しく後押ししてくれる。
そんな映画だったと思います。
とてもよい映画だったと思います。

::
個人的には寄宿舎体験があるのでやっぱり感慨深いものがありました。
同窓生には皆観てもらいたい!!

【評価・つけるとすれば】
4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年10月11日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年70本目】映画「ベイビーわるきゅーれ・ナイスデイズ」観ました。

高石あかりと伊澤彩織が演じる殺し屋コンビの活躍を描いたガールズアクションシリーズの第3弾。
任務のため宮崎県にやって来た二人が、同じターゲットを狙う一匹狼の殺し屋によって窮地に追い込まれる。
監督を阪元裕吾、アクション監督を園村健介が務める。

プロの殺し屋コンビである杉本ちさと(高石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)は、宮崎県で一つ目のミッションを終わらせ、バカンスを楽しんでいた。
ちさとはその日がまひろの誕生日であることに気付くが、次の任務のために宮崎県庁へ向かう。
しかしそこには、これまでに149人を殺害し、150人目として彼女たちと同じターゲットを狙う殺し屋がいた。

【感想】
まだまだ、まだまだ、もっといける!
ガールズアクションの頂ここにあり!

まずストーリー、脚本。
二人の絶妙に緩い会話劇の要素はそのまま。
プラス俳優陣が増え、トルクが強くなった分も力み無く加速。
宮崎でバカンスついでにミッションをする、という設定も丁度良い塩梅。
味のある嫌味も健在の詞回し含め、完成度の高いストーリー、脚本です。

次に演出、演技。
ちさまひコンビの緩急の付け方は流石の一言。
予想の遙か下を行く生活のだらだら感、予想の遙か上を行く執行のスピード。
さらにさらに池松壮亮さんの登場、ラスボス感は映画に重みをつけています。
アクションの手数、技の多彩さは「軽量級」ならでは。
瞬き不要で楽しめました。

さて。
今回は意外とアクション以外のシーンも作り込まれていて。
キャラクターそれぞれの

苦悩や孤独、
コミニケーションの難しさ、
仕事への思い

これは殺し屋以外の職業、日々にも意外と共通だなと感じさせられたりもしました。

いずれにせよ
相当に練り込まれたアクション映画。
もっと観たい!!と思えるシリーズでした。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年10月09日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年69本目】映画「侍タイムスリッパー」観ました。

現代にタイムスリップした武士の姿を描くSF時代劇。
落雷に打たれて現代の時代劇撮影所にタイムスリップした会津藩士が、剣の腕を生かして斬られ役で生計を立てる。
メガホンを取るのは安田淳一。
山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうののほか、峰蘭太郎、紅萬子、福田善晴らが出演する。

幕末の京都。
剣豪として鳴らす会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)は、
ある長州藩士を襲撃するように命じられて刃を交えるが、その瞬間に落雷に打たれて気を失う。
目を覚ますと、新左衛門は現代の時代劇撮影所にいた。
混乱しながら行く先々で騒動を起こし、江戸幕府が140年前に滅んだことを知ってが愕然とした新左衛門はこの時代で生きることを決意する。
自分には剣の腕しかないと、新左衛門は時代劇撮影所の門をたたき、斬られ役として身を立てていく。

【感想】
正直に死ぬか、卑屈に生きるか。
時代が時代を斬る、見事な時代劇!

まずは脚本、ストーリー。
とにもかくにも設定が絶妙!!
タイムスリップものはもう完全に使い古されていて、新しさは難しいと思っていたのですが、、。
そこにあえての時代劇設定。
古さに古さをかぶせるという手法は完全に発明。
これには感服しました。
また、過去=江戸時代と現代=時代劇が廃れゆく日々の対比を台詞の軽妙さも必見。
非常によくできた脚本、ストーリーです。

そして演出、演技。

時代劇シーンの殺陣シーンは実に練り込まれていて、観ていてハラハラするほど本格派。
カメラワークも含め、素晴らしいアクションシーンがてんこ盛りです。
さらには会話劇としてのシーンも見所多く。
少しづつ主人公が現代に溶け込んでいく様子や、
周囲の人々の優しさ溢れる台詞回し。
敢えてなんでしょうが敵役も含め悪人なし設定が生きる演出。
これもまたすばらしい発明でした。

気になったのは、一点だけ。
劇場の調整なのか、それとも原盤の問題なのかわかりませんが、
音が大きい、、。
もしかすると昔の時代劇のアテレコ風にしたかったのかも?しれませんが
これはちょっと聞きにくく、新設とは言いがいかなと思いました。

さて。
僕は会津生まれ。
実直に生きることをまるで使命のように教え込まれるお土地柄。
ならぬものはならぬ、で生きていたつもりでしたが、、、。

いつのまにか

嘘もつくし、
裏もかくし、
手も抜くし、
悪口も言う。

暑ければ日陰を歩き
寒ければ他人を風よけに

とても正直だったり、実直だったりとは遠い有様。

ただ、遠いんですがそれなりに幸せな日々でもあるわけです。

難しいな、、。
生き易さを巡る問いは難しいな。
と感じる次第。

実直さを見失うほどに廃れた気持ちに、
いやいやすてたもんじゃ無いと感じさせてくれる、
現代を優しく斬った時代劇。

映画愛、人間愛に溢れた今年の代表作だと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.4です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年09月25日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年66本目】映画「ありふれた教室」観ました。

ある中学校で発生した盗難事件が予想もつかない事態を引き起こし、学内の秩序が崩壊していくサスペンス。
新任の若手教師が盗難の嫌疑をかけられた生徒を守ろうとするも、生徒や同僚らとの対立を招いて追い詰められていく。
イルケル・チャタクがメガホンを取り、レオニー・ベネシュが主人公を演じる。
第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされたほか、数々の映画賞で高い評価を得た。

赴任先の中学校で1年生のクラスを受け持つことになった若手教師・カーラ(レオニー・ベネシュ)。
同僚や生徒の信頼を得ていく中、校内で盗難事件が続発し、彼女の教え子が犯人として疑われる。
校長らの調査に反発したカーラは独自に犯人捜しを始め、ひそかに職員室の様子を撮影した映像に、ある人物の犯行の瞬間を見つける。
しかし盗難事件を巡る彼女や学校側の対応はうわさとなって広まり、
保護者の批判や生徒の反発、同僚教師との対立を招き、カーラは窮地に追い込まれる。

【感想】
良心、使命感、理性。
どれもがありふれている「秩序のあやうさ」を見事にパッケージングした快作。

まずストーリー、脚本。
小さな、ありふれている、ただし見逃してはいられない「事件」。
この着想が実に白眉。
落としたインクが不規則に水面を汚してゆくように、じわりじわりと進行する。
徐々にテンポを上げて最後、加速の限界を振り切るような展開。
よくある、それこそ「ありふれた」話の領域をしっかり越える脚本でした。

そして演出、演技。
これもまた絶妙。
大人の事情を子供っぽく、子供の小狡さを大人っぽく。
これもまた「ありふれてない」、
いったい何を観ているのか、ざらついた違和感を感じました。
俳優陣、子役陣も躍動。
テンションの上げ方、不穏な空気のだし加減等々、精密な演技。
この精密さがラストにかけての濃密さを支えきっています。

さて。
小さな、
それでいて目をつぶることはできない事件、
言葉を換えれば「悪の種」はこの社会で生きていれば毎日のように出会ってしまう。
その種が発芽し根を生やせばあっという間に悪意の根は伸び、事態は大きな花を咲かせてしまう。

どこで間違ったのか、
適切な方法は無かったのか。

振り返った所で後の祭り。

破綻後の処理に右往左往しているのが昨日で今日で明日、
つまりは日々の生活なのだと思い知らされる。

行き詰まった社会正義、秩序の行方を見事に捉えた秀作だったと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年09月24日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年65本目】映画「愛に乱暴」観ました。

吉田修一の小説「愛に乱暴」を実写化したサスペンスドラマ。
威圧感がある義母や自分に無関心な夫への不満を振り払うかのように丁寧な暮らしを送ることに固執する女性に、不穏な事態が次々と降り掛かる。
江口のりこ、小泉孝太郎、馬場ふみかのほか、風吹ジュン、水間ロン、青木柚らが出演する。

夫の実家の敷地内にある離れで暮らす桃子(江口のりこ)は、センスのある装い、手の込んだ献立などにこだわる丁寧な暮らしを心がけていた。
それは、何かと小さなストレスをぶつけてくる義母や自分に無関心な夫に対する不満の裏返しでもあった。
そんな中、近隣のゴミ捨て場での不審火、愛猫の失踪、夫の不倫を匂わせるアカウントなど、桃子の周囲で不穏な出来事が続発する。

【感想】
丁寧で規則正しい生活を支えているのは、闇深き感情なのか、、、。
人間の性根を暴き出す怪作サスペンス。

まずストーリー、脚本。

主要キャストのもつキャラクターイメージに合わせた台詞廻し。
生活空間に描写を固定する。
会話劇としてはやや多めの台詞量なれど、冗長過ぎず。
といった感じで、こなれた脚本、言葉が入って気易い安心設計です。

次に演出演技。
江口のりこさん、感情のオンとオフをきっちりつけながら物語を牽引。
これは圧巻でした。
脇を固める俳優陣もきっちりしっかり、そつの無い演技。
物語自体もテーマ通り、
ストレスフルなシーンを丁寧に積み重ね、飽和させる。
これも見事。

ただ
圧巻で見事、なんですが。
どのシーンもどこかで見たことのあるシーンに観えてしまう。。。
どの台詞も聞いたことがある。。。
俳優陣に当て書きをしたような「ぴったりさ」が逆にこぢんまりした印象になってしまったように感じます。

さて。
生活の中でストレスレスに生きていくのはもはや不可避。
いつだってざらついたような感情の中暮らしている。
どこに導火線があるのかわからないし、
いつ沸点に達するのかも知らない。
すさんだ心をなんとかやり過ごして、生きていくので精一杯。

「整理された生活」は闇深き性根に当たる陽光なのかと思うと、薄ら寒くなりました。

この映画、やっぱりサスペンスなのだと思います。

【評価・つけるとすれば】
3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年09月17日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年64本目】映画「きみの色」観ました。

山田尚子が監督を務めた長編アニメーション。
不思議な能力を持つ少女が、3人でバンドを組んで過ごす日々を映し出す。
吉田玲子が脚本を担当し、牛尾憲輔が音楽を手掛けている。

ミッションスクールに通う高校生のトツ子は、幼いころから人が色として見えている。
ある日、古書店でとても美しい色を持つ美少女、
そして音楽好きの少年と出会ったトツ子は、彼らとバンドを組む。

【感想】
「誰か」と「何か」を全力で。大人になってしまった僕らに贈る純度高めのジュブナイル。

まずストーリー、脚本。
ややオールドスクールにすら感じる舞台設定。
冷たい感情を抑え、飲み頃の紅茶のような温度感の言葉を紡ぐ、振り幅をあえて小さくした脚本。
この「狭さ」を巧みに活かし、台詞の一つ一つを粒立たせる。
台詞の数も多くも少なくもなく、自然。
素晴らしい脚本、こういうことだと感じさせてくれます。

そして演出、演技。

まずは見事な作画。
「人が色で見える」という設定自体相当難易度が高いと思うのですが、まさに「観える」。
そしてそしてどのシーンも美しく、優しい。
観客の気持ちを柔らかにすることに徹底しています。

次に演技。
若者が「好き」に触れたときの純粋さをこれまた見事に表現。
確実に、あの頃に、引き戻されます。

ただ、

高校生のもつ大人と子供の中間のような危うさだったり、
みえない将来への葛藤だったり、

は、
おそらく意図的に外してあり、
柔らかめのうどんを噛んだような、少し物足りなく感じました。

さて。
思えばあの日。

例えば部活、
例えば勉強
例えば恋

夢中になって
全力で好きの回路を全開にして
本気になってることにすら気づかず、
転ぶことも恐れず、走りまくっていた
あの日。

忘れていたわけではないが
薄れていくし、
大人という単語がボリュームを下げる、
それがこの日。

諦観、冷笑になれてしまうことを成長と勘違いしないか。
強い問い掛けを受けたような気がします。

【評価・つけるとすれば】
3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年09月10日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年63本目】映画「箱男」観ました。

映画化もされた「砂の女」などで知られる安部公房が1973年に発表した小説を石井岳龍監督が映画化。
段ボール箱をかぶって都市をさまよいながら世界を観察する「箱男」を巡るストーリーが展開される。
永瀬正敏と浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市のほか、渋川清彦、中村優子、川瀬陽太らが出演。
第74回ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門に出品された。

ダンボール箱をかぶって都市をさまよい、のぞき窓から外の世界を見つめ、ノートに妄想を記す「箱男」。
カメラマンの「わたし」(永瀬正敏)は街で見かけた箱男に心を奪われ、自分もダンボール箱をかぶってのぞき窓を開け、箱男になろうとする。
しかし本物を目指す道は険しく、「わたし」をつけ狙い箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ医者(浅野忠信)や、
わたしを誘惑する謎の女・葉子(白本彩奈)などが現れる。

【感想】
孤独、孤立が描き出すもの、それは世界の本質か、それとも。

まずストーリー。
独特すぎる設定を、言葉数をあえて減らさず、多弁雄弁に脚本にインストール。
これだけでもかなりの難作業、、。
よくぞここまで、と感じます。

次に演出、映像。
これはクラシックとパンクが入り乱れる、独特な演出であり作画。
リズムとスピードが破綻するターンと、ゆったりとした台詞廻しのターンが繰り返され、
次第に観客を困惑の世界へ導く作り。
これは安部公房の作家性の再現としては見事なチャレンジだったのではと感じます。

ただ、
やはりあまりに多弁な台詞回し、
変調しすぎる映像のリズム、
そもそも「箱」がダンボールの割に丈夫すぎる、、

など、基本的に入り込みにくい要素が多く、
「ぬぬぬぬぬう、、、難しいなこりゃ、、」
と感じたことも否めませんでした。

さて。

「完璧な孤独、完璧な孤立」

とは公房の描いた日々から今日を見事に言い当てたビックワード。

僕、僕らは
今この瞬間も孤立し、
自分を護る脆弱な箱の中で
小さい窓から世界をのぞき込んでいる。

箱の中からは自分の見たいものしか見えず、
匿名性は実に便利で自分の滑稽さを自分自身に気づかせない。

世界の普遍と人間性の不変を言い当てた作品、
恐るべきものを観てしまった感は強く残りました。

【評価・つけるとすれば】
3.6です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年07月15日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年46本目】映画「ルックバック」観ました。

藤本タツキによるコミックを原作とする青春アニメ。
小学4年生の少女が、漫画好きという共通点を持つ不登校の少女と共に漫画制作に邁進するも、やがて衝撃的な出来事が起こる。
二人の少女の声を俳優の河合優実と吉田美月喜が担当。
監督押山清高が務め、アニメーション制作をスタジオドリアンが手掛ける。

小学4年生の藤野は学生新聞で4コマ漫画を連載し、クラスメートから絶賛されていた。
ある日、藤野は先生から不登校の京本が手掛けた4コマ漫画を学生新聞に載せたいと告げられる。
そのことを機に藤野と京本は親しくなっていくが、やがて成長した二人に、全てを打ち砕く出来事が起こる。

【感想】
こんなにも、こんなにも。終わらない青春、その純度に心抉られる、この夏最高の映画体験!!。

まずストーリー。
とりあえず原作を予習して劇場へ。
漫画の持つスピード感、ぎゅっと煮詰まった濃密さをどのように?
と心配が先行していたのですがまあったくの杞憂。
あの藤野が、あの京本が動き出す。
それだけでもう、エモーションは最高潮に。
原作を愛していることがまっとうに伝わる脚本とはこのこと。
脚色も愛しているからこそ。
純度の高い「リスペクト」を感じることができます。

そして作画、演出。
まず、特筆すべきはその上映時間。
55分。
この短さにすべてを賭ける潔さ。
原作の密度を絶対に薄めない覚悟。
マーケティングを考えれば、致命傷になりかねない決断を、あえて選択。
本当は存在した膨大な時間、目から血がにじむような努力の時間を観客の想像に委ねる。
制作陣にはよくぞ僕を、僕ら観客を信頼してくれた。
劇場が確実に一つになる演出、素晴らしい以外の言葉が見つからないです。

さて。

創作への初期衝動、
天才との出会い、
その天才の努力。
立ちはだかる壁。
芽生える友情。
突然の幕切れ。

どれもこれもが形こそ違え思い当たること事ばかり。

振り向くことになれて。
前を向くことに戸惑うようになって。

ルックバック。
ドントルックバック。

昔を懐かしむような気持ちで観ていた映画が、
いつの間にか今の現実を穿つものに。

諦めてしまったものは沢山あるけれど、
諦め切れてないもの、あるよね。

まっすぐにペン先を突きつけられたような感覚になりました。

今を生きるすべての大人に。
心からおすすめです!

【評価・つけるとすれば】
4.6です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た

アルシオンのオフィシャルブログです

kazu_R
こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
伊豆の四季やイベント、グルメ情報などを中心に、時々は好きな映画や本などのこともUPしていきます。
メールはこちらまで・・info@alcyon-izu.com
連絡先はこちらまで:0557-51-5600

最近の投稿

人気の記事

カレンダー

2024年11月
« 10月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

アーカイブ